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福岡地方裁判所小倉支部 昭和35年(ミ)1号 決定 1967年3月04日

更生会社 渋谷産業株式会社

主文

本件変更更生計画(昭和四一年一〇月八日の関係人集会で可決されたもの)を認可しない。

理由

本件更生会社は昭和三七年四月七日更生計画認可の決定を受け、次いで同三八年一〇月五日変更更生計画認可の決定を受け、更生計画を遂行中であるが、管財人樋口勇から当裁判所に昭和四一年八月二日更生計画を別紙変更更生計画案(以下本件変更更生計画案と云う)のとおり変更することを認可する旨の申請がなされ、本件変更更生計画案は昭和四一年一〇月八日の関係人集会において可決された。

更生計画変更申請書及び昭和四一年一〇月八日の関係人集会における管財人の陳述によれば、本件変更更生計画案は、更生債権者友和産業株式会社外二一名の更生債権者が総額金一三、一七四、〇三九円の更生債権を放棄したことを前提として作成され従つてそれらについては更生債権から除外されていることが認められる。しかし昭和四一年一〇月八日の関係人集会における更生会社代表取締役渋谷政光の代理人渋谷秀雄の陳述及び昭和四一年一一月一日付の管財人提出にかかる上申書によれば放棄されたとされている更生債権の内更生債権者友和産業株式会社の有する更生債権金四、六六六、四七二円については、更生計画によれば、昭和四一年五月までに第一回の割賦金七九九、九六六円を支払うべき旨定められているところ、更生会社は更生計画にもとずかずして、昭和三五年五月から同三八年六月までの間に前記更生債権全額の弁済をしたものであること、これに対して他の更生債権者に対しては何れも更生計画に基づく第一回割賦金の支払を履行していないことが認められる。ところで更生債権は更生手続によらなければ弁済することはできないものであり、更生会社が更生計画によらないで特定の更生債権者に対してのみ弁済することは禁止されているところであつて、これに違反する行為は無効と解すべきものである。もとより更生債権者が更生債権について免除ないしは放棄をすることは許されるところであるが、更生会社が一部の更生債権者に対してのみ個別的に弁済し、従つて他の更生債権者に対して弁済をしていないにもかかわらず、弁済した更生債権についてのみ放棄を得たものとして処理することはそれによつて更生計画の遂行の状況を不明にし、ひいては更生計画を無視する結果となる。従つて、前記認定の更生債権者友和産業株式会社に対する金四、六六六、四七二円の弁済は無効であるというべく同会社の更生債権は依然として存在するものといわなければならない。しかるに、本件変更更生計画案では更生債権者友和産業株式会社の右更生債権については前記のように個別的に全額弁済したのにもかかわらず放棄されたものの如く処理し、それを更生債権から除外している。

又本件記録によれば本件更生会社の更生計画は、更生債権については、昭和四〇年五月末日まで全額その支払を猶予し同年六月から同四七年三月まで八ケ年にわたつて割賦弁済するものとされているところ、本件変更更生計画案は更生債権全額について昭和四一年一一月末日まで支払を猶予し別紙記載の如く支払うものとされている。前記の如く一部の更生債権者に対し、更生計画によらずして弁済した上、(友和産業株式会社の更生債権額は多額であつて、その占める割合は無視できない)他の更生債権者に対しては更生計画を変更し支払猶予期間を延長することは、いかに変更更生計画案それ自体において、公正、衡平な差等を設けていたにしても、それ以前において実質的に更生債権者間の公平を破壊しているものであつて右変更更生計画案が公正、衡平を害するものであることに変りはないものというべきである。

よつて本件変更更生計画案は会社更生法二三三条一項二号に違反するので、変更更生計画を認可しないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判官 奥輝雄 鈴木禧八 寺崎次郎)

別紙

変更更生計画案

一、現存更生債権及び更生担保権

1 更生債権(但し国税その他の公の請求権)

なし

2 一般更生債権

更生債権総額 四〇、三三九、八九六円

内確定額 同右

未確定額 なし

確定更生債権の内訳

別紙更生債務弁済予定変更表<省略>中債権者名及び金額欄記載のとおり

3 更生担保権

担保権総額 一〇、三八六、六四七円

内確定額 同右

未確定額 なし

確定更生担保権の内訳

別紙更生担保債務弁済予定変更表<省略>中債権者名及び金額欄記載のとおり

二、弁済方法

1 一般更生債権

昭和四一年一一月末日まで支払を猶予し別紙更生債務弁済予定変更表記載のとおり支払う。

2 更生担保権

昭和四一年一一月末日まで支払を猶予し別紙更生担保債務弁済予定変更表記載のとおり支払う。

3 劣後的更生債権の内利息及び損害金は更生担保権並に一般更生債権完済後その翌月より年五分の割合により毎月末日限り各確定債権額に按分して弁済する。

三、本件更生計画中前記以外の点については従前の計画どおりとする。

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